1 それは、ケア労働です
「ボランティア」という言葉には、どこか「余った時間で、善意でやってあげること」という響きがあります。
けれども、応援会員がしていることは、それとは少し違います。
人がこの土地で暮らし続けるために、誰かがしなければならないことがあります。
買い物に行く。病院へ付き添う。話を聞く。ゴミを出す。
――これらは、ケア労働です。社会がまわっていくための、いちばん土台にある仕事です。
ところが、この仕事は長いあいだ安く見積もられてきました。
多くは家の中で、多くは女性が、無償で担ってきたために、「仕事」として数えられてこなかったからです。
ケアは「誰にでもできること」にされ、そのために「誰の仕事でもないこと」にされてきました。
私たちは、これを「働くこと」と呼びます。
「かわにし時間」のチケットは、そのための仕組みです。
お金に換えるためではなく、「これはたしかに働きだった」と、お互いに認め合うために渡されます。
(もちろん換金出来ますが。)
だから、応援会員をお願いするとき、私たちは「お手伝いしてください」とは言いません。
「一緒に働きませんか」と言います。
2 依頼を受けるのも、断るのも、自分です
現役のころ、仕事は「上から言われて、お金のためにするもの」でした。
何をするか、いつするか、どこまでするか。決めるのは自分ではありませんでした。
時間も、体も、半分は勤め先のものでした。 ・・・退職して、それが終わりました。
自分の体は、もう自分のものです。
応援会員の働き方は、そこから始まります。
・依頼を受けるかどうかは、そのつど自分が決めます。
・今日は都合が悪い、と言っていい。理由を説明する必要もありません。
・何回やらなければならない、という決まりはありません。
・誰かに評価されることも、査定されることも、比べられることもありません。
これは、雇われて働くこととは、根本のところで違う働き方です。指示されて動くのではなく、自分で引き受ける。だから、同じだけ体を使っても、疲れ方が違います。
「協同労働」という考え方
働く人が自分たちで出資し、自分たちで運営し、自分たちで働く。
そういう働き方を「協同労働」と呼びます。 (2024年 労働者協同組合法施行)
地域応援隊かわにしも、その考え方に近いところで動いています。
会のきまりは、会員が総会で決めます。おかしいと思ったら、意見を出して変えることができます。
「決められたことに従う人」ではなく、「決める側の一人」として加わっていただくということです。
断ることに、気をつかわずに済むように
「自分で決められます」と書いても、断ったときに誰かが困る顔が浮かぶなら、それは本当の自由ではありません。
そこで、依頼は個人に直接ではなく、事務局を通して会員全体に回る形にしています。
あなたが受けられなくても、別の方に回ります。
断ったことが、誰かを困らせることにはなりません。
「お金のためでなく、自分の生きがいのために働いている方でした。」
―― 漬物づくりの会社を営み、小学校の花壇づくりを何十年もしてきた方から感じたこと
お金のために働く時期は、もう終わりました。ここから先は、自分のために働く番です。
3 支えているつもりが、教わっている
移動支援でご一緒する時間は、そのまま「人から学ぶ時間」になります。
車の中は、思いのほか、話がはずむ場所です。
・近所の様子、最近の出来事、昔この土地で何があったか、世の中のこと ――話題は尽きません。
・こちらの困りごとを相談することもできます。 ――犬とのつき合い方を教わった、という会員もいます。
・知らなかったこと、考えたことのなかった見方に出会って、視野が広がります。
・そして、自分の話題が増えます。人と会うことが、また楽しみになります。
八十年、九十年をこの土地で生きてきた方から、直接お話をうかがえる機会は、そう多くありません。
図書館にもインターネットにも載っていない話が、助手席から聞こえてきます。
支えに行ったはずが、いつのまにか教わって帰ってくる。応援会員をしている人が口をそろえて言うのは、このことです。
4 予定があると、一日が変わる
何もない日は、自分のことだけで過ぎていきます。
・外に出ると、生活が開かれ、生き生きしてきます。
・「やること」があると、一日の中に計画が生まれます。
自分の暮らしと折り合いをつけながらやり遂げたとき、あとに充実感が残ります。
・社会とつながっている、という手ごたえがあります。
・少し身だしなみを整えて出かける。 ――それは、自分自身を大切にすることでもあります。
退職すると、多くの人が、役割と、行き先と、人に必要とされる感覚を一度に失います。
仲間の集まりも、年を重ねるにつれて少しずつ減っていきます。
「こういう活動が欲しかった。……こうしてみんなのために働く仕組みができて嬉しい」
―― ある会員が入会申込みの際に
週に一度でも出かける先があること。それだけで、一週間の形が変わります。
5 これまでの人生が、そのまま役に立つ
応援会員として活動を始めた方が語る理由には、こんなものがあります。
「運送会社での経験を地域の為に活かしたい」
長年ハンドルを握ってきた技術が、そのまま地域の足になります。
社会福祉協議会での活動経験を持つ方からは、この活動に「共鳴するものがあった」という言葉もありました。
「父親が運転免許の返納をきっかけに活動範囲が狭くなってしまったことから、移動支援の必要性を実感している」
身近な人の不便を見てきた経験も、りっぱな出発点です。
「同級生に誘われて参加したが、地域の役に立てることが嬉しい」
これまで積み上げてきたもの――仕事の技術、暮らしの知恵、人づきあい、この土地で見てきたこと――が、目の前の困りごとに直接結びつく。その手ごたえが、続ける力になっています。
6 支える側と支えられる側は、入れ替わります
地域応援隊かわにしの根っこにあるのは、「明日は我が身」という考え方です。
今日、誰かを助ける人は、明日、助けてもらう人になるかもしれません。
「サービスを買う・売る」関係ではなく、「お互い様」の助け合いです。
「自分が年寄りになって困ってから頼むんじゃなくて、その前に入っておいて、弱ったらお願いする。それが本当の支え合いだと思うんです」
―― 会員のことば
元気なうちに会員になって支える側で活動し、いずれ支援が必要になったら、今度は受ける側になる。
この循環そのものが、参加する上での安心材料になっています。
「安心の保険として入会したい」という声も寄せられています。
支える人と支えられる人が、はじめから分かれているのではありません。
順番が回ってくるだけです。
だからこそ、「してあげる」でも「してもらう」でもない関係でいられます。
7 正直に、言っておきたいこと
良いことばかり並べても、実際に始めてから話が違うと感じられては困りますので、しんどい面も書いておきます。
・いつも「ありがとう」が返ってくるとは限りません。 体調の悪い日は、そっけないこともあります。
・話が長くなって、こちらの予定が押すこともあります。
・これまで元気だった方が弱っていく姿を見るのは、こたえます。
それでも続けている方がいるのは、それを上回るものがあるからです。
そして、一人で抱え込む必要はありません。
困ったことがあれば事務局に相談できますし、会員同士で話す場もあります。
8 こんな心配は、いりません
入会をためらう理由は、たいてい「やる気がない」からではなく、「自分にできるだろうか」という不安からです。
よくいただくご質問にお答えします。
Q1 毎回、引き受けなければいけませんか。
A いいえ。ご都合のつくときだけで結構です。断っても、別の会員に依頼が回ります。誰かを困らせることにはなりません。
Q2 特別な資格や技術が必要ですか。
A 資格は要りません。移動支援は普通自動車免許があれば参加できます。
ただし、「誰にでもできる簡単なこと」だとも思っていません。
相手の様子を見て、待つ。急がせない。聞き役にまわる。――これは、長く生きてきた人だからできる仕事です。
資格ではなく、あなたのこれまでが問われます。
Q3 名前だけの参加でもいいですか。
A 構いません。実際に、「名前だけの応援会員」という形で加わってくださっている方もいます。
会員が増えること自体に意味があります。
Q4 事故やけがが心配です。
A 活動中は社会福祉協議会の福祉サービス総合補償、送迎サービス補償が適用されます。
万一のときも、会員個人が抱え込むことはありません。
Q5 一回にどのくらい時間がかかりますか。
A おおむね30分から1時間程度です。
月に4〜7回ほど活動されている方が多くいらっしゃいます。
Q6 知らないお宅へうかがうのは不安です。
A はじめのうちは、経験のある会員が同行します。慣れてから一人で、で構いません。
Q7 運転にあまり自信がありません。
A 移動支援以外のお手伝いもあります。できることから始めていただけます。
9 はじめかた
いきなり登録しなくて構いません。まずは、活動の様子を見にいらしてください。話を聞くだけでも歓迎します。
活動のながれ
1 依頼が事務局に入る → 2 会員に回る → 3 都合のつく方が受ける → 4 支援する → 5 活動記録票を出す
受けるかどうかを決めるのは、いつでもご本人です。
地域応援隊かわにし 事務局
電話 090-8253-9691 (担当 平林)
受付 随時
メール hiro193@mac.com(平林) roukyou.ueda02@gmail.com(事務局)
支えているつもりが、教わっている。――その感じを、一度、味わってみてください。